🌸Reviwing the Exhibition💀
来場いただいた皆さま
制作に関わっていただいた方々
ありがとうございました。
展示についてふりかえりつつ
あれこれと書きました。
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“花か髑髏か”
髑髏は、世情が不安定な時代に
流行してきたモチーフ。
死を意識することは命を感じること。
生と死を象徴するモチーフでもある花と髑髏。
モダンデザインにおいては
本質を覆うものとされた装飾。
文様を飾り装う行為こそが、
今ある生を祝うにふさわしい行為なのだと思う。
京都学派の哲学者として知られる田辺元氏は
「死の哲学(死の弁証法)」と
呼ばれる哲学を構想した。
田辺はこの論文の中で現代を「死の時代」と規定。
近代人が生きることの快楽と喜びを
無反省に追求し続けた結果、
生を豊かにするはずの科学技術が却って
人間の生を脅かすという自己矛盾的事態を招来し、
現代人をニヒリズムに追い込んだという。
田辺はこの窮状を打破するために、
メメント・モリの戒告「死を忘れるな」に
立ち返るべきだと主張した。
“Grateful”
京都の工房・職人とコラボレーションし、
友禅の新たな魅力を作り出すことに挑戦。
NISHIOKA PENCILとして
初めての引き摺りと、振袖が出来上がりました。
“Grateful” とは「ありがたい」という意味。
京友禅の伝統的な技術やそれらを扱う職人、
材料、道具は年々減ってきています。
そういった「存在することが稀である」
「尊い」技術によって
生み出される美意識を残すべく、
「未来への宝物」になる着物を
制作するというコンセプトです。
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こちらが導入の言葉。3年ぶりの個展は、
2年前くらいから制作をはじめ、
昨年「花と髑髏」のモチーフが出来たことを
きっかけに、
これまでの制作を見直し、編集しながら、
開催の直前まで作品を制作しました。
これまでの展示では
平面にとどまることが多かった図案を、
染め、織り、撮影し
「飾る/着飾る」意味を掘り下げ、
僕なりの答えを表したものです。
その間に世界は疫病にはじまり戦争まで。
一連の作品に、無関係ではありません。
花か髑髏か Sumi ink on Washi paper, 2022.
個展のタイトルを面相筆で描いたもの。
オリジナルの手描き書体「雲形書体 西岡流」。
これ、テンプレートを開発したんです。
和文も英文も出来るんです。
菊華髑髏図 Screen Print on Silk, 2022.
菊の花を髑髏に見立てた図案の大判のスカーフ。
7版の型を使ってシルクツ イルを染めた。
枡見本やテストプリントの確認は
いつもドキドキする。
手を洗ってからよく仕上がってますようにと、
軽く祈りながら梱包を開ける。
図案が化ける時がある。
それが今回でした。文句なしです。
生地の11匁は薄めでスルスルと柔らか。
表裏にしっかり柄が出ているので
アレンジもしやすい。
頭に巻いた りアレンジした写真をいくつか送ってもらいました。
スカーフは飾っても良いのですが、
身につけてもらってなんぼですね。作ってよかった。
スカーフは数量限定の制作、
あと少しだけ在庫あります。
今回の制作を依頼した工場は横浜で
長く染めと縫製事業をされてきたところなのですが、
今月で廃業されるということでした。
とても残念です。
現世美人画 UTSUSHIYO BIJINGA AOI YAMADA, 2022.
Photograph Akiko Isobe
Styling Takuto Satoyama
Hair & Make Michio Kutsukake
Model Aoi Yamada
Art Direction Nishioka Pencil
Tights うなぎ、菊華髑髏図 Nishioka Pencil
和傘 京都和傘屋辻倉
白の空間に艶っぽく、美しく、足が踊る。
アオイさんの演技は新種の生き物を見ているようで。
立ち会いがご褒美のような撮影でした。
タイツを履いた足をどう見せようかとあれこれ
考えた末の答えが和傘との組み合わせ。
当初は、生け花に紛れたり、
襖からにょきっと出てたり
というエス キースだった。
機会があればこっちの案もトライしてみたいな。
スペースの都合で会場に展示出来なかったカット。
どの写真も生き生きとしてるんですよね。好きです。
墨で描いたうなぎタイツの原画。
うなぎは飼ったことがあるから、
描写には苦労しなかった。
北斎の描いたうなぎには本来無いはずの
腹びれがあったりする。
ドジョウにはある。
オリジナルアートワーク「菊華髑髏図」の
プリントタイツ、
あと少し在庫あります。うなぎは完売です。
薔薇と髑髏 Pigment, Acrylic, Canvas, Wood Panel, Resin, 2022.
吉祥モチーフである蝙蝠を、緋色の薔薇に見立てた。
円形のキャバスにアクリルガッシュと金泥で描いた後、表面をレジンで固めた。
蛇と髑髏 Pigment, Acrylic, Canvas, Wood Panel, Resin, 2022.
蛇と髑髏の連ねた円形の図案は、
輪廻する死生観を表したもの。
河鍋暁斎の「髑髏と蜥蜴」に
インスパイアされたものであります。
菊華髑髏図屏風 Pigment, Digital Print on Washi Paper, 2022.
菊の花を髑髏に見立てた図案を四曲屏風に。
和紙に高精度インクジェットプリントを施した上から、手描き友禅用の金の顔料で着彩。
朱枠の屏風は京都「藤田雅装堂」による制作。
天地約90cmの小ぶりな屏風がキッチュに、
可愛らしく仕上がった。制作しながら飾られる部屋を想像するのもまた楽しい。
金魚 Screen Print on Washi paper, 2018.
金魚の尾鰭を敷き詰めた繊細な文様。和紙に型染め。
西岡ペンシルのオリジナルアートワーク「金魚」は、
NISHIOKA PENCILの浴衣としても好評いただいております。
今季は新たに西陣「田村屋」さんに依頼、
繊細で美しい織帯が仕上がりました。
今年の夏、久々に浴衣でお出かけしようかな
という方も多いのではないでしょうか。
会場で販売していた浴衣や帯は
こちらでも購入できます。
ご興味ある方は是非チェックしてみてください。
花蟷螂(ハナカマキリ)Inkjet Print on Paper, 2020.
花に擬態する花蟷螂の図案。
こちらの文字も「雲形書体西岡流」です。
パンデミックの期間に時間をかけて描いたシリーズの一つ。
花蟷螂は視覚的にも生態もかっこいいんです。
擬態は視覚的のみならず、
捕食するハチなどの虫を引き寄せるフェロモンも出すという科学的擬態もしている。
周りにリアルな花が無いところでアピールする方が
捕食の効率が良いことも知っているという、
堂々とした擬態(言葉としてはちょっと矛盾しちょっとているような)。
花結び Screen Print on Washi paper, 2016.
西岡ペンシルオリジナルの結び文様。
ハートに見立てた花弁のモチーフを結んで連ね、
縁が繋がって広がる様子を文様に表しています。
和紙に木版手摺り顔料染め。
京都西陣の唐紙の工房「かみ添」による制作です。
モノトーンで落ち着いた色調の中に光によって変わる
表情が、とにかく上品なんです。
引き摺り“鏡の女髑髏風” Wax-resist dyeing on Silk, 2022.
引き摺りの背面に大きく染められた髑髏は、
鏡に映る遊女の騙し絵 。
妖しく艶美な引き摺りに仕上がりました。
京友禅の老舗「岡重」制作による
臈纈(ろうけつ)染め。
大きめの紗綾形の地も効いています。
“All Is Vanity / Charles Allan Gilbert(1892)”の
オマージュ。
振袖“ペルシアン” Screen dyeing on Silk, 2022.
NISHIOKA PENCILの新作振袖「ペルシアン」。
ペルシア~更紗インスパイアの西岡ペンシルオリジナル文様。織物を模した大胆で繊細なドット柄を板場 友禅で仕上げました。
独創的な手染めに取り組む京友禅の手染め工房「吉兵衛」と制作。背や袖を縁取るように柄を配置したこだわりの仕立てです。
8月後半に振袖の受注会を予定しています。
また告知いたします。
あなたとわたし Pigment, Sumi, Washi Paper, 2021.
接吻を表す連続する文様。
やや小ぶりな短冊矩形の木パネルに貼った和紙に描いたもの。
金沢 Pigment, Sumi, Washi Paper, 2020.
城下町金沢をモチーフにした文様。
大小たくさんの路、今も多く残り風情を作る用水、
群青色の壁、金などがモチーフ。
短冊石 Pigment, Sumi, Washi Paper, 2020.
金沢城の色紙短冊積石垣や、桂離宮の庭石に見る
美の構造をまねぶべく制作した。
飾り扇子“蝙蝠のかわほり”緋色 / クロイゾンネブルー
Pigment, Sumi, Washi Paper, bamboo,2022.
花の影を蝙蝠にみたてた図案。
京都「宮脇賣扇庵」による制作。
【かわほり】数本の骨を片面に貼った扇。扇を開いた様が羽を広げた蝙蝠(こうもり)の姿に似ているからともいわれている。
雲母(キラ)引きされた和紙の上に、アクリルガッシュ、墨、手描き友禅に使用する顔料などで着色。
遠目にはほぼ見えないのですが、黒の影にはうっすらと蝙蝠のディテールを面相筆で描き込んでいます。
菊華髑髏図 桃 / 赤 / 黒
Pigment, Wood Panel,Digital Print on Washi Paper, 2022.
菊の花を髑髏に見立てた図案。和紙に高精度インクジェットプリント、木パネル貼り。マットな質感が美しい仕上がりです。40cm角サイズは、場所を選ばず 飾りやすいサイズです。
“菊華髑髏図”は今回の展示の核となったモチーフ。
毛筆で描いたものを元に複数の作品に展開したもの。
西岡ペンシルのオリジナルアートワーク“菊華髑髏図”はKAPUKIの新作振袖のために図案として描き下ろしたもの。京都の誉田屋源兵衛にて制作された振袖は、惚れ惚れとする仕上がりです。
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~現世美人画~
美人画とは、容姿や内面の美を
探究しモチーフとした絵のこと。
その多くは様式化された
浮世絵の流れを汲んだものを指す。
文化の差異や多様性を認め讃え合う価値観が
世界に広がる中で、
日本/アジアの美をアップデートするべく、
東京発の、今様の美人像を皆さんと
作り上げていきたいと思います。
ASIAN BEAUTYなヘアメイクに、
日本の民族衣装でもあるKIMONOを
モダンなスタイリングで纏い
フォトグラファーのしなやかな視点で切り取ります。
新しく、美しい、スタンダードを
示すことができればと思います。
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撮影にあたって、僕がまとめた
“現世美人画”コンセプトシート。
美人画という様式を借りながら、
その人の中にある新たな美の発見し、
また別の(オルタナ)美を
実像として表すというテーマ。
昨年から始めたシリーズです。
現世美人画 UTSUSHIYO BIJINGA
AYAKA YASUMOTO, 2021.
Photograph Akiko Isobe
Styling Takuto Satoyama Hair & Make Motoko
Kimono coordination EMON
Model Ayaka Yasumoto
Art Direction Nishioka Pencil
着物 Nishioka Pencil
神坂雪佳 “金魚玉図” より再構築
京友禅「岡重」による制作
帯 Nishioka Pencil
西陣「田村屋」による制作
Jewelry NOBORU SHIONOYA
安本さんは悪性リンパ腫の闘病を経て復帰された後、
まだグループとしても今年ほどライブが出来てなかった昨年の秋ごろに撮影をお願いしました。
新しいオーラを纏っていた安本さんは、
一言でいうと「美」でした。
現世美人画 UTSUSHIYO BIJINGA
KAHO KOBAYASHI & RIKO NAKAYAMA, 2022.
Photograph Akiko Isobe
Hair & Make Takashi Hida, Motoko
Kimono coordination EMON
Model Kaho Kobayashi, Riko Nakayama
Art Direction Nishioka Pencil
着物 Nishioka Pencil
京友禅 手染め工房「吉兵衛」による制作
二人から生まれる美しいポーズの組み合わせ。
小林さんと中山さんには、この二人ならではの
ストーリーを準備して撮影をお願いしました。
二言でいうと「美美」でした。
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“現世美人画”は、今後も続けていきたいシリーズです。モデルのリコメンなどありましたらメッセージください。
性別や年齢など特に縛りたくないとも思っています。
会場で展示・販売していた作品や
グッズの一部は購入できます。
中でも「西岡ペンシル×KAPUKI」の
コラボレーションで制作したTシャツは好評でした。
サイズによってまだ在庫あります。
ご興味のある方、チェックしてみてください。
>NISHIOKA PENCIL STORE
>KAPUKI ARTS
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個展についてふりかえりつつ、
少し掘り下げてつらつらと記しました。
自分のためのメモでもありますが、
来場出来なかった方にも
展示の様子が伝わればと思います。
会場で作品について皆さんと対話をすることで、
以前と違う視点を得られたり、
曖昧なだったものが明確に出来たりした機会でした。
今回の制作の中で途中で完成をあきらたもの、
新たに思いついたものがまだあります。
日々出会いやきっかけがあって、
おかげさまで予期せず
世界が広がることが嬉しいです。
また次に繋げたいと思います。
ありがとうございました。
JULY 13, 2022 西岡ペンシル